山中コンサルティングオフィス

Asia Business Column

アウェーでの交渉 /作戦タイムは必要な戦術

そもそも第二外国語で交渉に臨むということは、その時点でアウェーでの戦いを強いられることになる。アウェーで最も苦労する要素の1つとして、今回は数字のことを取り上げたい。

英語でのカウントは1,000を語るくらいまでは調子もまずまずなのだが、1万を超えるあたりから少しややこしくなる。それ以降は、日本語が万を単位にするのに対し、英語は1,000 を軸にして、1万を1,000が10個(Ten thousand)、10万は1,000が100個(A hundred thousand)などと数えだすからだ。

人によってはこの 1,000 をKと略し、10K(1万の意味)、100K(10万の意味)などと言い出す方もある。さらに9,500 を9.5 K (Nine point five K)としたり顔で数えられようになった頃、同じ数字を Ninety five hundred と伝えてきたアメリカ人の友人に戸惑ったこともある。

数字はとにかくややこしい。にもかかわらず、アパレルの交渉場面ではこれに単位の悪魔が追い打ちをかける。坪効率を語る際には、坪を平米か平方フィートに換算した上、円を相手の通貨に変えなければいけない。それをKを使って表すのだ。

こういうとき、頭の回転に自信のない身としては、混乱を避けるために心がけていることがある。それは、できるだけ登場する単語を相手と共有するということ。相手の言葉を借りることによって、使用単語を少なくするということだ。

たとえば、日本語の坪効率を表す英語の言い回しはいくつか存在するが、仮に相手が “Sales density” という単語を使ったら、自分もそれに合わせ、以降の会話はすべて Sales density で続ける。

得てして、せっかく調べてきたのだから知っている単語を使いたいというのが人間の心情だが、そこは相手を尊重することで会話の単語数を減らすことに専念する。そうしなければ頭がパンクする。

この相手の言葉を借りる作戦には、思わぬ別の効果もある。コーチングではエコー、言い換え、反響のテクニックと言うそうだが、真摯に理解しようとしている姿勢を相手に示すことができるらしい。

「話が始まる15分前には、あなたにここにいてほしいのです」と言われた際、「分かりました。15分前ですね」と応えるのがエコー。

「分かりました。私は、15分前にはここにいます」とするのが言い換え。

反響では、「問題ありません。あなたにとって、重要であることを理解しました。話が始まる15分前に、私はここにいます」(例文の原文はすべて英語)といった具合に、相手の言葉を使って返答をすることで、真剣に聞いている態度が効果的に伝わるというのだ。

最後にアウェーでの奥の手。かかってきた電話はとらない。第二外国語で数字の交渉をしなければいけない場面では、準備が必要だ。相手からの電話を受けては先制攻撃を受けるのも同然で、ダメージが回復しないまま、ついつい半ばパニックになりながら、「イ、Yes」と答えてしまうことがある。

そうならないためにも、一度かかってきた電話はやり過ごし、「5分後にこちらからかけ直します」とのメッセージを送った上で、急いで机の上にメモを用意し、静かな場所でシナリオを確認して交渉を再開した方がいいだろう。

文 石橋正樹

立場に負けない交渉

いい加減を逆手にとる

クアラルンプールで記者として働いていたときのこと。マレーシア工業開発庁が発表した外国直接投資について取材申請の電話を入れた。最初は総合受付窓口、そこから担当部署へ。担当部署から広報に。さらに広報のマネジャーに通してもらった。この間、保留の間に電話が切れ、唯一番号を控えてあった総合受付からやり直すこと2回。やっとたどり着いたマネジャー様は一通り話しに耳を傾けて下さった後、「担当部署に問い合わせて下さい」と逆戻り、堂々巡りの一言を発せられた。

 

最終的に一番親切だった担当部署につなぎ直してもらい、今度は彼の直通番号を確認した上で、何度目かのやり取りで上司に取り次いでもらうことに成功。同庁高官への取材が実現した。ここで言いたいのは、組織のあり方について云々という愚痴の類いではなく、窓口や担当が変われば断られた申請が通ることもあり得るということ。事実、このときの教訓によって、ほかの人が無理だとあきらめた案件をいくつか通すことができた。

 

■交渉のテーブルを移動する

さて、交渉。あらためて言うまでもないことだが、テーブルについた時点で交渉は立場が強い方に有利に働くようにできている。これは会社対会社、組織対組織の力関係なので、交渉担当者レベルではいかんともしがたい。ただ、アジアの場合には上述のように、官公庁や比較的大きな会社であっても部署間のコンセンサスがとれていない場合が多く、ここに付け入るすきがある(あった)。テーブルを会社の前から部署の室内に移動することにより、会社対部署の交渉に持ち込むことが可能なのだ(だった)。相手が部署なら、少なからず力関係も変わってくる。

 

良くも悪くも、アジアが日本人の感覚からは多少いい加減であるのは周知のこと。商談に数十分遅れるのは許容範囲。エアコンの修理を依頼すると、翌朝10時から11時までの間にお伺いしますとアポイントメントに1時間も含みを持たせた挙げ句、正午になっても姿を見せない。催促の電話をすると「明日の午後1時から2時までの間に行くから」と一方的に言われてしまう。こんなことも未だにある。これは「いい加減さ」がマイナスに作用する典型だが、このままでは悔しいのでそれを逆手にとってやろうという島国根性がビジネスの場面で働く(個人的には・・・)。

たとえば、あるブランドが期間限定でアジアのデパートに売り場を持つことになったときのお話し。プロモーションのイベントに協力していただくようデパートとの交渉を任された。最初の担当者はフロアの責任者。反応はまずまず、だが決済はできないからと財務部門を紹介される。後で考えると、彼には日本ブランドへの理解が乏しかった(こちらの説明が不十分だった)。財務担当者はガチガチで話が一向に前に進まない。時間は迫る。後がない。そこで現場担当者に掛け合った。逆戻りである。ところがジャパニーズファッション好きな彼女は、上司であるフロア責任者に直訴してくれた。最終的には彼が財務に直談判してプロモーションの共催が実現した。

 

■最後はやっぱりメンツの話

組織力とコンセンサスの強さで定評ある日本企業が相手なら、人によって言うことが違うということは少ないのかもしれない。ただ、こちらでは往々にしてそれがある。さらに書き加えるならもう1点。特に中華系の人たちが大事にするメンツに関しても、対外部より対内部のガードの方が弱まるのだと思う。つまり、外に対して1度断った内容を覆すことは難しいが、窓口が別の場所に移った状態で、その窓口が自分と違った見解を提示したときに、それを黙認する方がよっぽどハードルが低いのだ(きっと)。こうした場合、最初にかたくなだった財務部門に「あなたのおかげです」という感謝の言葉を伝えることを忘れてはいけない。その一言で、このお方の顔が立つ。

 

立場が弱い条件での交渉場面では、こちらを取り込むことによってメリットを得られる部署なり個人を見つけ、仲間になっていただいく。その上で内部から交渉を後押ししてもらう。部署間で言っていることに相違があるようであれば、むしろラッキーと考えるような発想の転換が必要かもしれない。

文 石橋正樹

How much に隠された意味/だまされない情報収集術

「いいね、それ。値段はいくら?」

顔見知り程度の方に持ち物の品定めをされ、数秒後に値段のことを聞かれた経験があれば、あなたのアジア生活もベテランの域に入ったかもしれない。

「その時計はいくら? 家賃は? 給料は? 学費は? 日本ではどれくらいするの?」等々、華人系の人は一般的に日常の中で How muchを調べることに余念がない。今はもう慣れたが、当初は突然の調査開始に戸惑ったことを覚えている。

ところが最近になって、この How much 調査に実は重大な意味が隠されていることに気付いた。

日本人は海外でだまされる。高い値段で買わされる。通常より不利な条件での取り引きを強いられる。いずれも、耳にしたのは1度や2度ではない。

でも、どうやらこれは事実ではなさそう。シンガポール人も中国人は油断できないと言うし、中国人同士でも決して警戒を解くことはない。日本人にだまされたというケースもある。

では、なぜ日本人は損をするのか?

答えを交渉の現場から導きだすと、大別して1つにはこちらの責任、2つ目にはビジネスや取り引きに対する考え方の違いが関連しているように思われる。

1. 情報量の不足
値段交渉が可能な海外の市場に日本人が買い物に行ったと仮定する。まず店員に値段をたずねる。そこから日本円に換算して安いか高いか判断する。ある程度納得した上で、まけてほしいと交渉する。気持ち、安くなる。これを機に常連になるからとか、友達を連れてくるからもっと安くしてと頼む。断られる。

一方、交渉に強い華人の場合。ことあるごとに値段に関する情報を収集した上で、適正価格を事前に把握しておく。店員に値段をたずねる。高いと返答し、適正価格よりさらに安い値段なら買うと逆提案する。断られる。店を出る。追いかけてきた店員が、いくらなら買うのかと聞く。適正価格周辺でおさめる。

そう、華人系の人たちが How much にこだわるのは、だまされないようにするための防御策だったのだ(きっと)。

相場、下限、上限。これを知らないで交渉に臨むと、痛い目に会うことは自ら何度も実証済み。だいたい嫌な想いをするのは購入後、人から「それは高いよ」と言われたとき。遅まきながら、初めて適正価格に関する情報を得るときである。

日本人の気質上、何気ない場所でストレートに値段のことをたずねるのは難しいかもしれない。ただ、現地の人たちは以外とオープンに応えてくれる。坪と平米、平方フィート、単位の違いに、ややこしい通貨換算など、海外では環境障壁も少なくない。ただでさえ、現地の物価を肌で感じるのは難しいので、日頃より数字に関する情報収集を心がけた方が良いかもしれない。

2. 今こそ全ての論理
上述の「これから常連になるから安くして」がなかなか通じないように、「今回の契約を機にお互いが成長できるように努力するので、なんとか妥協いただきたい」もあまり効き目はない。

こちらが信用されてないからではない。強いて言えば、互いにまずは今の契約で実をとるべきとの考えが優先されるからだろう。極点な言い方をすれば、確約のとれない未来よりも、目前の実利に専念する。将来はまた、その時点での「今」をテーブルに乗せた交渉が始まる。この繰り返しで、結果として長い目で見た付き合いが成立するのであって、初めから長期的展望を共有しての関係構築は難しい。

アジアビジネスでは、1本1本の木をたどっていくことが、森への道に続くのかもしれない。

遠慮は無用 /大げさで、ようやく通じる交渉術

遠慮は無用 /大げさで、ようやく通じる交渉術
「できるだけ、ご意向にそえるようにします」。 この言葉を何度も聞いていると、これは日本では好意的に受けとめられるフレーズではないかとの疑問がよぎる。何度も耳にしてきたのは、海外での交渉の現場。当然、思考は英語モードに切り替わっている。

 

英語は決して得意ではない。ただ、コミュニケーション力は 磨くよう常に心がけてきたつもり。相手の思考に近づけるよう、無意識のうちに訓練がなされていたのかもしれない。結果として、交渉や通訳で現場に入るときには考え方が日本人離れしていることが多いようだ。師匠にも良くご指摘をいただく。

 

無鉄砲にもクアラルンプールで起業したのが7年前。日本で事業を起こした経験など、もちろんない。交渉や取り引きの相手は、ほとんど中華系かインド系の人々。従って、経験値からお伝えする内容には日本的な常識が著しく欠落していることは自他ともに理解している、きっと。どうか 片目を 共につぶっていただきたい。

 

■誠意は最後に

さて、その上で冒頭の言葉。「逆に、そちらはどのようにお考えですか?」も同様だが、商談のあまりにも早い段階で出てくると小さな違和感を隠しきれない。アポをとって先方のオフィスに乗り込んでいるにも関わらず、開口一番か二番くらいで「とにかく、できるだけご要望にお応えできるようにしますので、何でも仰って下さい」では、その数分後にその場を後にすることになってもきっと不思議ではない。

 

理由は2点。まず、試合巧者は自分から先にカードを切るようなことはしない。できるだけ情報を引き出した上で、どうすれば優位に立てるかを常に考えている。次に、商談の場で異国の相手が期待しているのは、どういうメリットをもたらしてくれるのかということ。

 

「今は具体的な提案はできないけれど、将来、何かあれば」という話なら、勤務時間よりパーティーの場か、席が偶然隣りになった飛行機の中の方が喜ばれるかもしれない。

 

では勝つためには?

 

提案する内容を精査し、相手にとってメリットになりそうな部分を冒頭にもってくる。日本人ならちょっとひいてしまうくらい大げさに語る。同じことを違った角度から繰り返し 、相手が食いつくポイントを探る。反応があれば、できるだけ長く話してもらう。心中を引き出す。

 

「そちらは、どのようにお考えですか?」は議論が半ばで出つくし、膠着(こうちゃく)した状況を切り返すときに有効。恐れ多くも付け加えると、「こちらがどうと言うより、できるだけ合わせますから」が早過ぎると、何の提案もできないのではないかと誤解される危険性あり。

 

日本人にとっての切り札は、巧妙な駆け引きではなく相手を思いやる気持ちだと思う。心のこもった一言は、別れ際にがっちり握手を交わすタイミングで伝えた方が効果的かもしれない

文:石橋正樹(YRCG COO)

遠慮は無用 /大げさで、ようやく通じる交渉術

「できるだけ、ご意向にそえるようにします」。 この言葉を何度も聞いていると、これは日本では好意的に受けとめられるフレーズではないかとの疑問がよぎる。何度も耳にしてきたのは、海外での交渉の現場。当然、思考は英語モードに切り替わっている。

 

英語は決して得意ではない。ただ、コミュニケーション力は 磨くよう常に心がけてきたつもり。相手の思考に近づけるよう、無意識のうちに訓練がなされていたのかもしれない。結果として、交渉や通訳で現場に入るときには考え方が日本人離れしていることが多いようだ。師匠にも良くご指摘をいただく。

 

無鉄砲にもクアラルンプールで起業したのが7年前。日本で事業を起こした経験など、もちろんない。交渉や取り引きの相手は、ほとんど中華系かインド系の人々。従って、経験値からお伝えする内容には日本的な常識が著しく欠落していることは自他ともに理解している、きっと。どうか 片目を 共につぶっていただきたい。

 

■誠意は最後に

さて、その上で冒頭の言葉。「逆に、そちらはどのようにお考えですか?」も同様だが、商談のあまりにも早い段階で出てくると小さな違和感を隠しきれない。アポをとって先方のオフィスに乗り込んでいるにも関わらず、開口一番か二番くらいで「とにかく、できるだけご要望にお応えできるようにしますので、何でも仰って下さい」では、その数分後にその場を後にすることになってもきっと不思議ではない。

 

理由は2点。まず、試合巧者は自分から先にカードを切るようなことはしない。できるだけ情報を引き出した上で、どうすれば優位に立てるかを常に考えている。次に、商談の場で異国の相手が期待しているのは、どういうメリットをもたらしてくれるのかということ。

 

「今は具体的な提案はできないけれど、将来、何かあれば」という話なら、勤務時間よりパーティーの場か、席が偶然隣りになった飛行機の中の方が喜ばれるかもしれない。

 

では勝つためには?

 

提案する内容を精査し、相手にとってメリットになりそうな部分を冒頭にもってくる。日本人ならちょっとひいてしまうくらい大げさに語る。同じことを違った角度から繰り返し 、相手が食いつくポイントを探る。反応があれば、できるだけ長く話してもらう。心中を引き出す。

 

「そちらは、どのようにお考えですか?」は議論が半ばで出つくし、膠着(こうちゃく)した状況を切り返すときに有効。恐れ多くも付け加えると、「こちらがどうと言うより、できるだけ合わせますから」が早過ぎると、何の提案もできないのではないかと誤解される危険性あり。

 

日本人にとっての切り札は、巧妙な駆け引きではなく相手を思いやる気持ちだと思う。心のこもった一言は、別れ際にがっちり握手を交わすタイミングで伝えた方が効果的かもしれない

文:石橋正樹(YRCG COO)

第2次ナジブ内閣

次世代占う二世人事

 

なんだか、政治ブログのようになっていますが・・
ナジブ首相、2期目の内閣が発足しました。

要点をまとめると、総選挙で惨敗した華人政党 MCA が、党の
強い意向もあって入閣なし。多民族国家として組閣人事に民族
融和を図ってきたマレーシアでは独立以来初の華人政治家不在。

ナジブ首相は、運輸省のポストを防衛相との兼務にする形で、
「MCA のために空けておく」と秋波を送っていますが・・・、
このままでは火種になりかねないとの指摘も。

唯一、閣僚入りを果たした華人 Paul Low 氏は汚職撲滅活動家
で、マレーシア最大手行メイバンクの頭取と共に首相府相に抜
擢された。今回の目玉人事といえる。

マハティール元首相の三男ムクリス氏が、クダの州首相という
強力なポストに就いた一方、その元首相との関係があまりよろ
しくないと伝えられているカイリー・ジャマルディン氏が、ス
ポーツ青年相として初の閣僚入りを果たした。

アブドラ前首相の娘婿にあたるカイリー氏とムクリス氏は、共
に与党内の若手ホープとして期待されているものの、強いライ
バル関係にあることでもしられる。

16日に発表された第1四半期の GDP 成長率は4.1%と、輸出
不調を主因に過去3年間で最低。ナジブ新政権の手腕に注目が
集まる。

http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324767004578484671702885706.html

http://www.reuters.com/article/2013/05/15/us-malaysia-cabinet-idUSBRE94E0LP20130515

文 石橋正樹

マレーシアの将来は?

総選挙 GE 13 総括

 

独立後初となる政権交代の可能性で注目されたマレーシアの
第13回総選挙は6日、早朝に結果が発表されました。

・投票率は過去最高の80%
・与党連合は下院で改選前から7議席減の133議席
・一方の野党連合は、同7議席増で89議席
http://www.malaysiakini.com/news/229340

マレー系を含むブミプトラが有権者の7割以上を占める非都
市部のペルリス、パハン、トレンガヌ、クランタン、サラワ
クの5州では与党連合が議席総数の67%を獲得。

対照的に、都市部のクアラルンプール、セランゴール州、ペ
ナンでは野党連合が議席総数の78%を抑えました。
http://www.bloomberg.com/news/2013-05-06/anwar-s-malaysia-leadership-quest-derailed-in-rural-heartland.html

政権交代には至らなかったものの、野党の得票率が50.8%
となり、与党は44年ぶりに50%を割り込みました(44.7%)。

得票率で下回った与党がより多くの議席数を確保できたのは
小選挙区制の特性と、与党連合の地盤が強い農村部に多数の
議席が配分されていたことが影響した結果と言われています。

民族間の対立を危惧する声も聞かれますが、都市部と農村
部の乖離も激しいようです。
http://www.nytimes.com/2013/05/07/world/asia/07iht-malaysia07.html?_r=0

前回のブログでお伝えした DAP のリム・キッシャン顧問が、
ジョホールで州首相を4期務めた与党連合の重鎮を破るなど、
華人系国民の支持を受けた野党 DAP の躍進が目立ちました。

与野党逆転による先行きの不透明感を嫌った投資家の心理を
反映したのか、翌7日の株式市場、マレーシア通貨リンギは
共に高値で取引を終えました。
http://edition.cnn.com/2013/05/02/world/asia/malaysia-election-preview

野党は、「選挙に様々な不正があった」と政府与党を糾弾し
ていますが、選挙管理委は選挙結果が覆ることはないと早々
と宣言しています。

今日(8日)にも野党による4万人規模の抗議集会が行われ
ると伝えられていますが、暴動などに発展する可能性はなさ
そうです。
http://www.reuters.com/article/2013/05/07/us-malaysia-election-idUSBRE9460EM20130507

これから何が起きるかですよね?

すでに、マハティール元首相がナジブ首相のリーダーシップ
に失望したとのコメントを発表するなど、与党内からは首相
への不満が出始めています。
http://www.straitstimes.com/the-big-story/asia-report/malaysia-elections/news/story/mahathir-says-did-not-expect-najib-do-worse-

一方、汚職や腐敗を嫌った有権者の多くが野党に流れた今、
同じ与党内の若手政治家は改革の推進が不可欠と訴えていま
す。

アブドラ前首相の義理の息子で、与党青年部のカイリー・
ジャマルディン部長はツイッターで以下のようにコメントし
ています。

「昨日(日曜日)の出来事は、猶予を与えられたにすぎない」
「BN が変化を示さなければ、国民は最後通告を突きつけるだろう」
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/79964aa8-b617-11e2-93ba-00144feabdc0.html#axzz2SeaCeeuy

ガソリンの補助金カットや消費税導入など財政再建には避けて
は通れない政策で、新内閣が党内をまとめられるかが注目され
ます。

中核与党の UMNO は、今年末にも党大会を予定していますが、
舵取りがうまくいかなければ、首相退陣を巡る攻防が焦点になる
かもしれません。

もう1つ、直近で問題があります。

与党連合の中で惨敗した華人系政党 MCA の党首が、今回の結果を
受けて、同党は入閣ポストを辞退すると発表したのです。

これまで与党連合は、組閣時に華人系やインド系の割り当てを用意
することで、民族融和を図ってきました。

独立以来56年間、与党連合による政権が覆らなかった歴史を考える
と、同じ華人系政党でも野党 DAP から閣僚が出るとは考えづらい
ところです。

MCA は、党大会を待たずに即時辞任するよう党首に求める声が党内
で急速に高まるなど、すでに分裂状態にあるとも伝えられています。

2期目のナジブ政権は、閣僚人事から難しい船出を迫られそうです。

文 石橋正樹

激戦カウントダウン、あと5日

マレーシア運命の日

 

ほぼ毎日、選挙関連の不正疑惑告発に対し、選管や当局が火消しに
追われるという報道が続いています。

マレーシアにとって運命の投票日は、あさって5日に迫っています。

「UMNO(中核政党)大幅議席減:シンクタンクが予測」
#GE* UMNO will “lose a lot of seats”, says think tank

週刊経済誌の The Edge が3日、ショッキングな見出しで分析記事を
掲載しました。

国立マラヤ大学が行った調査結果をもとに与党連合の劣勢を伝えると
ともに、政府が大幅に改善したと主張する貧困率(1.7%)についても、
実際は19%だと疑問を投げかけています。

なぜ、この記事がショッキングなのでしょうか?
それは、主要メディアの報道と比べると良く分かると思います。

国営通信ベルナマ
「インド人社会は首相の政策に感謝を」

最大手英字紙 The Star
「与党完全勝利宣言、セパン地区で:ナジブ首相」

大手英字紙 New Straits Times
「ナジブ首相、プトラジャヤ復帰(政権維持)に自信」

国営通信はともかく、The Star 、New Straits Times ともに与党連合
の一角を担う政党が大株主です。

これまでの選挙では、テレビやラジオなど他のメディア媒体も含め、
メインストリーム以外の報道を目にすることは非常に稀でした。
選挙期間中はプロパガンダ報道の一方通行が常だったわけです。

The Edge は、日本で例えるなら週刊東洋経済みたいなもので、ビジネス
エリートには人気ですが、政治論評を大衆に伝える媒体ではありません。

それが、Yahoo の選挙特集ページに掲載されていたのを見つけたので、
その変化を個人的にショッキングだと感じたわけです。

ショッキングと言えば、マハティール元首相のブログも、その1つで
しょう。

今回注目される選挙区の1つにジョホールのゲラン・パタ(Gelang Patah)
地区があります。

なぜジョホールが重要なのかということを書くと長くなるので割愛しますが、
ゲラン・パタは同州の中でも有権者に占める華人比率が高い地区としてしられ
ています。

これまでは与党連合の一角である華人政党 MCA が支持を得ていた地域なので
すが前回の選挙と同様、今回も華人系国民の MCA 離れが深刻化しています。

ジョホール奪取を目指す野党 DAP は、同党の重鎮リム・キッシャン元党首を
同選挙区の候補に擁立。防戦に追われる与党連合は MCA をあきらめ、現職の
ジョホール州首相(マレー系)を対抗馬に選んで戦いに応じているという構図
です。

DAP の戦略に対し、マハティール元首相はリム・キッシャン氏を名指しで
批判。ブログの中で、「民族対立を煽動する行為」だと糾弾しています。

これがきっかけとなり、リム氏の名前は検索ワードの上位にみられるように
なりました。

まさに民族対立というのが、今回の選挙の、いやマレーシアの歴史の大きな
大きなキーワードなのです。

1969年、選挙戦の結果に伴うマレー系と華人系の民族対立によって、国会は
1年以上空転、暴動によって300人以上の死傷者が出たと伝えられています。

この暴動がきっかけとなり、マレーシアは世界でも例のないマジョリティを保
護するブミプトラ政策を導入、華人系の国民もこれに同意し、与党連合内の華
人政党を支持するようになりました。

皆さんの中には、1998年に起きたインドネシアでの暴動が記憶に新しいかも
しれませんが、マレーシアでも過去に悲劇が起こっています。

44年経った今年の総選挙。

汚職や腐敗の追放に続く焦点の1つが、このマレー人保護政策だと言われてい
ます。

ブルームバーグの記事中にある、上場企業の華人系創業社長のコメントが象徴
しています。

「なぜ華人が政府に反発するのか?理由はとても簡単です。子供たちの世代
に、教育、就業、ビジネスの機会を奪われた私たちの苦しみを味わってほし
くないのです」

野党連合を率いるアンワル元副首相は、現状のマレー人保護政策を見直すと
公言し、華人系の支持を集めています。

一方、1997年の通貨危機の際、IMF の管理下で緊縮財政に踏み切るべきだ
と主張したことで、ときのマハティール首相に対立したアンワル副首相に対
し、西側諸国の傀儡だと批判する向きもあります。

様々な憶測が飛び交う中で気になるのは、大方の選挙予測がいずれも僅差で
それぞれの優劣を伝えていることです。ほぼ毎日、不正疑惑が報道されてい
る状況です。拮抗した選挙結果が報じられると、非難合戦が一層過熱する恐
れも否定できません。

カリスマ的指導者のアンワル元副首相は65歳と高齢で、5年ごとに行われる
総選挙に挑むのは今回がラストチャンスとみられています。

最後にもう1つ。非常に珍しい記事を見つけました。出所は MSN。
Wajahat Ali という、パキスタン系のアメリカ人イスラム教徒が書いたアン
ワル元副首相への独占インタビューです。

なぜ、珍しいかというと、その説明には記事中のアンワル元副首相のコメント
を引用することにします。

「投票日まで残り10日を切ったのに、メインストリームメディアからは1分の
放映機会すら与えられていません」

同記事に対する「優良」コメント44件うち(5月3日午後3時現在)、
26件が野党、18件が与党を支持する内容でした。

2013年5月5日、マレーシアの将来が見えてきます。

文 石橋正樹

マレーシアの今を読み解くキーワード

GE 13

4月3日、ナジブ首相が下院の解散を宣言し、マレーシアは1957年の
独立以来最大の混戦が予測される総選挙に突入しました。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/6caf0d64-9c10-11e2-8485-00144feabdc0.html – axzz2PkJarBKthttp://www.ft.com/intl/cms/s/0/6caf0d64-9c10-11e2-8485-00144feabdc0.html#axzz2PkJarBKt

選挙管理委員会は10日にも投票日を発表する見通しですが、現在のと
ころ4月27日投票説が有力なようです。

与党、野党ともに連立を組んで選挙戦に挑みます。建国史上最も政権
に近い今回の野党連合を率いるのは、アンワル元副首相です。

野党に期待する有権者の多くは、現政権の腐敗体質に変化を求ており、
野党連合は政権を担う力があるかどうか、試されています。

「与党連合が現有の議席数は減らすが、政権交代までにはいたらない」
というのが大方の予測のようで、ロイター通信は「アンワル陣営が政権
をとるとは考え難いが、不可能なことではない」と分析しています。
http://www.reuters.com/article/2013/04/03/us-malaysia-election-parliament-idUSBRE93203Z20130403


はためく与野党旗。街中のいたるところで目につくようになった

ナジブ首相は、外資参入の最大の障壁と言われていたブミプトラ資本規
制を一部を除いて撤廃するなど、積極的に外資を誘致して、経済を牽引
する政策をとってきました。

モルガンスタンレーは、「与党連合の議席が55%を下回ると、投資家に
とってはネガティブな結果となる。また、リーダーシップと国家の安定
に懸念が残る」と発表しています。
http://www.reuters.com/article/2013/04/03/us-malaysia-election-parliament-idUSBRE93203Z20130403

一方で、野党連合の追い風になると指摘されているのが、今回初めて選挙
登録する約300万人の若い有権者です。人口の3割を超えるこのグループ
の数は、前回2008年の選挙時から約25%増えています。

現在の議席数は与党連合137議席に対し、野党連合は75議席。

「選挙結果によって、既定路線のプロジェクトや政策に待ったがかかる恐
れがあるため、投資家にとっても予断を許さない」とみられている今回の
選挙(General Election 2013 = GE13)に内外の注目が集まります。
http://blogs.wsj.com/searealtime/2013/04/03/malaysian-investors-may-get-a-bumpy-ride/

文 石橋正樹

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