山中コンサルティングオフィス

Asia Business Column

前首相を起訴、政権交代後のマレーシア

建国史上初の政権交代から、100日以上が過ぎました。消費税(GST)を即座に廃止するなど、実行力をインパクトによって示そうとする姿勢が伺えます。本日20日には、マネーロンダリングなど計25件の罪でナジブ前首相が起訴されました。

直近の調査で支持率70%以上という数字が示す通り、どこで誰と話しても、周囲のマレーシア人から現政権に対する批判を聞くことはほぼありません。

ただし、日系企業をはじめ外国人を雇用する法人や団体の多くは、かなり混乱しているようです。

数十億リンギ流出、外国人労働者市場

経済誌の特集記事です。 選挙公約に掲げた雇用のマレーシア人ファーストを実行に移したため、ビザを更新または取得できなかった外国人労働者が続出し、その分消費市場が大規模に冷え込むことを警告しています。

一方、前政権による放漫財政のつけで、国庫は財政難も指摘されており、マハティール首相や経済を担う関係閣僚は外資誘致の重要性を訴えています。

本来、不法就労者を含む外国人単純労働者の数を制限することと、外資企業駐在員のビザ発行手続きは別案件であるはずなのに、政権が代わってからというもの、ビザが厳しくなったと口にする企業関係者は少なくありません。

先週、イミグレーションの出先機関で、首相府省の官僚の方とパネルディスカッションをする機会がありましたので、思い切って聞いてみました。

「新政権は、外資系企業の駐在員ビザ発行に厳しいようなのですが、それは政策と考えた方が良いのでしょうか。企業としては投資政策にも関わってくる重要事項なので、教えてください」

マレーシアにとってパートナーとなり得る外資企業は非常に重要だと考えているし、(駐在員による)所得税収入も欠かせないものだとの回答でした。

政策に近いところにいる方々と、現場レベルで認識に齟齬が生じているのかもしれません。

与党連合が政権奪取時の結束力を維持し、運営力を高めていくことに期待したいところです。

YRCG マレーシアオフィス
石橋正樹

【KLマーケット解説4】ミッドマーケットの主流業態はSPA

マレーシアの百貨店や高級モールに軒を連ねる欧米ブランドショップの多くは、ブランド商と呼ばれるプレイヤーがフランチャイズ的に展開しています。そのため、個人店を除いて日本のようなセレクトショップチェーンは少なく、ローカルのアパレルメーカーやバッグ・靴メーカーもありますが外資勢に押され気味です。

また、マレーシアのファッションの主戦場であるモールでは、SPA(製造小売業)業態が中心で、かつては香港のSPA企業が席捲していましたが、今はグローバルなSPA企業の進出により影が薄くなっています。

◆ブランド商

マレーシアでは、クラブ21、ウィンタイ、FJベンジャミン、ロイヤルスポーティングハウスなどのシンガポールや香港を本国とする企業がメジャーです。

かつてはラグジュアリーブランドやイギリスの中級ブランドが主でしたが、ウィンタイ(ユニクロ、トップショップ、香港it)、ロイヤルスポーティングハウス(ザラ、ボッシーニ)、FJベンジャミン(ギャップ)のようにSPAやセレクトショップの現地展開も手がけるようになり、ブランド商の存在感はますます増しています。日本ブランドは、三越伊勢丹と提携し日本法人を設立しているクラブ21での取り扱いがほとんどとなっています。

(写真 ウィンタイが手がけるユニクロ)

◆ローカルメーカー

バッグブランドのボニア(マレーシア)、ライフスタイル提案のブリティッシュインディア(マレーシア)などがメジャーです。百貨店の平場で展開してきたアパレルやファッションメーカーは、モールにあるグローバルなプレイヤーに押され気味ですが、服飾雑貨などではまだ存在感を示しています。また、一部ではオリジナルブランドを開発し、モールでの出店を増やしているプレイヤーも存在しています。

(写真 中高級モールや百貨店には必ず出店しているボニア)

◆SPA
H&M(スウェーデン)、ジョルダーノ(香港)は現地法人で出店しており、パディーニ(マレーシア)はローカルSPA企業です。
モールに出店しているほとんどのファッション業態はSPAであり、大きくグローバル、香港、ローカルのプレイヤーに分けられますが、グローバル系の人気が圧倒的です。一方で、ローカルのパディーニは主力業態パディーニの他、カジュアル業態シード、シューズ業態VINCCIなどの業態ミックスで店舗展開を広げています。

(写真 マレーシア随一のローカルSPAパディーニ)

【KLマーケット解説4】グレード分化が進むスーパーマーケット

マレーシアでは、スーパーマーケットのグレード分化が進んでおり、入居するスーパーのグレードで、ショッピングモールの格が決まるといわれているほど、ターゲット顧客の所得とスーパーの出店は密接にリンクしています。

一般的に、中高所得者層は中高級スーパー以上、中低所得者層は中級スーパーやハイパーマートを主に利用しています。例として、中級スーパーのザストアは主に地方で展開しており、首都圏には1店舗ずつしか開業していません。そのため、首都近郊の中低所得者層の一般的な買い物先はハイパーマーケットといえます。一方、マレーシアの高級スーパーは富裕層や外国人の多いエリアに限定して存在しています。

なお、ミニスーパーをのぞく全てのグレードでイスラム教徒に配慮し、非ハラルフードの売り場を区別しているため、スーパーのグレードによって顧客ターゲットの民族が異なることはありません。

◆グルメスーパー
クアラルンプールでは、伊勢丹 KLCC、香港GCHリテールが手がけるコールドストレージの上位業態ジェイソンズ、現地独立系ビッグがあげられます。青果、精肉、鮮魚、グロサリーの種類が豊富で酒類、ベーカリー、チーズ類も多く、輸入品を中心に高級な食材やこだわり品を扱っています。

(写真 ジェイソンズ)

(写真 ビッグ)

◆中高級スーパー
日本のイオン、香港GCHリテールの主力業態コールドストレージとメルカルト、現地大手のジャヤグロサリーなどで、国内外の流通大手が中心となっています。中でも急成長している現地の新興系ビレッジグロサリーは、クアラルンプールの有力ショッピングセンターに次々と出店、10店舗を構えており注目されています。グルメスーパー同様、青果、精肉、鮮魚、グロサリーの種類が豊富。輸入品、酒類、ベーカリー、チーズ類も扱っています。都市部を中心に展開しています。

(写真 メルカルト)

(写真 ビレッジグロサリー)

◆中級スーパー
現地企業のザストアが代表的な店舗としてあげられます。青果、精肉、鮮魚、グロサリー、ベーカリーを扱っていますが、種類は限定されています。地方や首都圏郊外を中心に展開しています。

◆ハイパーマート
英国のテスコ、香港GCHリテールが手がけるジャイアント、日本のイオンビッグなどです。ヨーロッパにあるハイパーマートと同じ業態で、超大型で低価格が魅力的です。郊外店舗の他にショッピングセンターのアンカーテナントとしても存在感を示しています。青果、精肉、鮮魚、グロサリーのほか、衣住飲食サービスまで総合的に品揃えしています。

(写真 テスコ)

◆ミニスーパー
現地企業のKK スーパーマーケット99 スピードマートなどで、コンビニエンスストアとのスーパーの間のような存在です。グロサリーを中心に品揃えしており、青果もおいていますが、精肉、鮮魚の取り扱いはほとんどみられません。

(写真 KKスーパーマーケット)

文:YRCG 編集:山中健

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【KLマーケット解説3】変革期を迎えるコンビニストア

マレーシアでは、コンビニエンストアは外資の参入は認められておらず、すべてローカル資本です。コンビニエンンスストアのマーケットシェア80%を抑えているとされるセブンイレブンもローカル企業がフランチャイジー運営しています。

いわゆる“パパママストア”やローカルチェーンにも至らない支店経営レベルのコンビニエンスストアも多く、また品揃えに関してサプライヤーへの交渉力が弱いことから日本と比べ見劣りするため全体的に業態進化が進んでいませんでした。

しかし、今後規制緩和されると期待されており、ファミリーマートも2016年に進出しました。ファミリーマート登場前は、セブンイレブンの独壇場だったマレーシアでのコンビニマーケットですが、現在変革期を迎えようとしていると言えそうです。

◆ファミリーマート

海外に6,000を超える店舗を有し、アジアでは圧倒的な存在感を示しているファミリーマート。畜産や水産加工などを行う食品製造を行う、マレーシアを代表する企業「キューエル・リソーシズ社」と組んで2016年に進出。クアラルンプール都市圏に20店舗を構えています。日本国内の品質に、ほぼ近く、清潔な空間と充実したMDが人気。キューエル・リソーシズ社の中食工場で一貫製造されたパンやサンドイッチ、おでん、中華まん、PB商品などが魅力です。クアラルンプールのパワーSC「メガモール」にある店舗は、MRT駅からの入口近くに立地し、大いに賑わっています。

◆セブンイレブン

マレーシアを代表するコングロマリットで、スターバックスなども手掛ける「ペルジャヤグループ」が、米国セブンイレブンのFC展開をしています。店舗デザインなどは日本のイメージに近いですが、運営レベルは日本と比べて低く、価格もスーパーと比べ割高。商品供給背景の違いにより、オリジナル商品も日本のように多くはありません。ただ、アリババの電子マネー「アリペイ」を導入するなど、市場リーダーらしい取り組みもなされています。

日本でいうミニスーパーもコンビニエンスストアにカテゴライズされることが多く、ローカル系では、同じ屋号でも立地・客層などにより品揃えや店構えを変えて、業態ミックスなどを行っています。KKスーパーマート、99スピードマートが、ローカルではよく見かけるストアブランドで、低価格が売りです。

駅構内やショッビングセンターの中などにはニューススタンドから進化したキオスク型のコンビニも多くなってきました。マイ・ニュース・ドット・コム、ニュースプラス、マグビットなどがそれに当たりますが、新聞スタンドを起源としているため、小型店舗が多いのが特長です。品揃えは、新聞・雑誌などが主力ですが、スナックや飲料、菓子、タバコなどの最寄り品も取り扱っています。

(写真 マイ・ニュース・ドット・コム)

また、車社会のマレーシアは、郊外のガソリンスタンドにコンビニエンスストアが併設されていることが多く、大手ガソリンスタンド企業も独自のコンビニスタンドを作り展開しはじめています。ムスラ・ショップ(ペトロナスが親会社)、セレクト(シェルが親会社)、トリーツ(ペトロンが親会社)などです。

マレーシアのガソリンスタンドは、コンビニやファストフード、ATM、郵便局などを備え地方では近隣型ショッピングセンター的役割を果たしています。石油メジャーの一角であるシェブロン(カルテックスブランドのガソリンスタンドを運営)が、セブンイレブンやバーガーキングと提携するなどの取り組みもみられます。

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文:YRCG 編集:山中健

【KLマーケット解説2】クアラルンプールの主要百貨店たち

マレーシアの小売市場では、欧米先進国や香港にあるような高級百貨店(例:バーニーズNY、ニーマンマーカス、ハーベイニコルズ)は存在せず、中高級百貨店と大衆百貨店に二分されます。中高級百貨店は、40代以上がメインの顧客となっており、アダルト層の衣料品が牽引しています。一方、メトロジャヤやKLそごうなどの大衆百貨店は、日本でいうGMS的な存在で、マレー色が濃いのが特徴です。

◆パークソン(Parkson)

地元系中高級百貨店の代表で、マレーシア国内に30以上の店を構えています。中国で57店舗以上展開して成功している他、ベトナム、インドネシア、ミヤンマーにも進出しています。近年は、韓国の「SPAO」や「MIXXO」のフランチャイジー事業も手がけています。

クアラルンプール出店先:パビリオン、KLCC、ファーレンファイト88 、スンガイワンなど10店舗
公式サイト: http://www.parkson.com.my

◆タングス(Tangs)
シンガポールの百貨店。洗練されたインテリアが特徴で、ファッションを得意としています。進出1号店となったパビリオンからワンウタマへ移転しました。現在、マレーシア国内に4店舗を展開しています。

クアラルンプール出店先:ワンウタマ
公式サイト: http://tangs.com.my

◆ロビンソン(Robinson)
シンガポールの百貨店。ミッドバレーの高級モール「ザ・ガーデンズ」のオープンと同時にアンカーテナントとして入居。シンガポールでは大衆百貨店路線をとっていますが、同店は中高級路線をとっています。

クアラルンプール出店先:ガーデンズ
公式サイト: http://www.robinsons.com.my

◆デベンハムズ(DEBENHAMS)
世界中に進出しているイギリスの百貨店、 デベンハムズのフランチャイズ店。大衆イメージが強い本国とは異なり、イメージ高い店舗を構えています。モール「ロット10」にあった店舗が、2012年にラグジュアリーモール「スターヒル」に移転オープン。クララルンプールの エンターテインメントモール「ザ・カーブ」、ペナンにも店を持っています。

クアラルンプール出店先:スターヒル、ザ・カーブ
公式サイト:https://www.facebook.com/MYdebenhams/

◆伊勢丹(KLCC)
伊勢丹のKLCC店は、2012年にリニューアルが完了。最上階にあった食品スーパーをコンコースに拡張移動し、集客の目玉としています。日系デパートならではのデパ地下が地元の人にも好評です。2016年には、ブギビンタンのモール「ロット10」の店をリニューアル。クールジャパン事業の一環として、「イセタン ザ ジャパンストア」 をオープンしています。

クアラルンプール出店先:KLCC、ロット10 、ザ・ガーデンズ、ワンウタマ
公式サイト:http://www.isetankl.com.my

◆メトロジャヤ(Metrojaya)
上場企業のメトロジャヤはサバ州など地方にも展開し、アウトレット店を含め7店舗を有しています。マレー色の濃い大衆百貨店。

クアラルンプール出店先:メガモール
公式サイト:http://www.metrojaya.com.my

◆KLそごう
日本のそごうが地元企業に売却した店舗。地元密着型のMDが特徴です。元日系百貨店のため日本の商品も取り扱っていますが、全体的にマレー色が強く、ハラル対応商品を多く販売しています。

クアラルンプール出店先:バンダラヤ駅前
公式サイト:https://www.sogo.com.my

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文:YRCG 編集:山中健

◆パークソン KLCC

◆パークソンが手がける韓国ブランドSPAO

◆イセタン ザ ジャパン ストア

【KL マーケット解説1】業態分化進行中

現在主要東南アジアの国々では小売店の業態進化と分化が進んでいますが、クアラルンプールやマレーシア他都市も同様です。これは、主要出店先であるモールの開発が進み、モールパッケージの進化と共に、小売店にも進化が求められているためです。ただ、ホームセンターなどの住関連の小売店など、日本などと比べて遅れている分野もあり、開発や外資参入余地もあると言えそうです。

1.百貨店
モール中心のマレーシアにおいて、百貨店は準核テナントにとどまっていることが多いようです。グレード別に見ると、パークソンや伊勢丹などの中高級百貨店とメトロジャヤやそごうなどの大衆百貨店に分かれ、大衆百貨店はGMS(総合スーパー)的役割を担っています。

2.スーパーマーケット
中間層が日常的に買い物をするのは、郊外にある超大型スーパーマーケット、ハイパーマート。テスコ、ジャイアント、イオンビッグなどがメジャープレイヤーです。他にもグルメスーパー、中級スーパーなど、ライフスタイル分化が進んでいます。

3.専門店チェーン
モールの主要テナントであるため、多くの小売企業で業態開発が進んでいます。香港を中心とするアジアプレイヤーが長年マーケットを牽引してきましたが、グローバルプレイヤーの進出により、その地位に揺らぎが見られます。

4.生業店
コンビニエンスストア、ミニスーパーなど政府の保護が厚い分野が残っており、他の分野とのレベル差が著しい状況です。しかし、この保護主義も緩和され、外資の参入がますます増えそうです。そのため、生業店が担っていた分野が大きく進化していくと予想されています。

次は、各業態の動向をレポートします。

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文 YRCG  編集 山中健

中東ビジネス、交渉決裂 〜モスク礼拝かなわず、帰国へ〜

(写真 シェイク・ザイード・グランドモスク)

昼食後にボビーと別れ、力のあるというショッピングモールと競合になり得る店舗をいくつか回った。熱気あふれるアジアのモールと比べると、どれも静かな印象だった。

これで出張の行程をすべて終えたので、世界最大級ともいわれるシェイク・ザイード・グランドモスクに行ってみることにした。しばらくタクシーで走った後、イスラム教の概念では酒で身体を清めることはできないことに気付き、行き先をエミレーツパレスホテルに変更した。

コーヒーを飲みながら、今回の成果をおさらいする。

会社のエンジンである社長は火傷を負わない程度であれば投資に前向き、専務は慎重姿勢。割れたところで、コンサルタントの立場に意見が求められる。貴重な1票になるという以上に難しいところ。

それは組織を交えて対面で話してみて、両社の間に明らかに認識のずれをみることができたからだ。しかし、ここには外国企業との交渉を重ねてきた経験からくる推測の要素が多分に含まれる。

この時点で、推測をもとに1票を投じることはできない。そもそも、“みぞ”自体が今後の交渉によって修復できる類いのものであるかもしれない。

相手企業の規模感が分かり、事業への期待が高いことは確認できた
ただし、三顧の礼で迎えられるという印象ではなさそうだ
有望なブルーオーシャンの市場であり、広がりも見込めそう
肝心な顧客の陰を見ることができなかった

上記 1. 〜 4. の要領でリスクと展望を伝えた結果、帰国後に MOU (契約覚書)の作成に着手することになった。

文 石橋正樹

中東ビジネス、交渉決裂 〜韓国料理と焼酎〜

(写真上 アブダビの夕陽)

ボビーの車で昼食へと向かう。自分の生い立ちについて、いろいろと話してくれた。

カリフォルニアで育ったこと。大学ではデザインを専攻していたこと。アメリカが大嫌いなこと。韓国で大学に通う息子がいること。息子を他の国に留学させたいこと。韓国の女性はお金にしか興味がないこと。両親がグアムでブティックホテルを経営しており、自身もスキューバダイビングのコーディネート会社を経営したら結構うまくいったこと。半年のつもりでUAE に来たのに、もう5年も暮らしていることなど。

話しを聞いている間に車は街を抜け、荒涼とした景色を脇に一本道のだだっ広い高速道路を長々と走り続けた。40分くらい経った頃、ボビーはスピードを落とし、住宅街の中をキョロキョロしながら何度もウインカーを点滅させた。

世界中、どこの都市でも新興住宅地というのはこういうものなのかと感心させられるような、少し広い土地に判で押したような同じ建物が区画に沿って理路整然と建ち並んでいる。ボビーの行く手がなかなか見つからないのも無理はない。

ようやく到着した昼食の場は、どうみても民家にしか見えない。何か違うところがあるとすれば、入り口に何やらハングルが書かれていること。ドアを開けると装飾もテイストも、店員さんが話す言葉もすべて韓国そのものだった。

流暢に韓国語を話すボビーは、冷蔵庫から焼酎の瓶を3本持ってきてテーブルに置いた。アブダビでは、ホテル以外でお酒は飲めない。酒は購入にすら、認可が必要という。この空間では、何もかもが異様だということになる。

それにしても英語を話すボビーはアメリカ人そのものだが、韓国語を発すると違和感なく韓国人だ。人間の感覚なんていい加減なもの。あらためて、国籍や人種など、人となりを表すのには何の役にも立たない。

文 石橋正樹

中東ビジネス、交渉決裂 〜王族を前にプレゼン〜

(Sex and the City の舞台となったエミレーツパレスホテル)

大会議室でのプレゼンテーションは、ある意味、儀式のようなものだった。日本で成功した美容事業のビジネスモデルがいかに素晴らしいか、とうとうと熱っぽく語り続けることに終始した。

その間、ムハンマド家の代表は黙ってこちらを見据えながら、時折「うん。うん」とうなずく。プレゼンが終わり、質問を受ける段になり、財務担当責任者が P&L に対する鋭い問いかけをはじめると、代表は次の来客があることを告げて退出した。

すべてボビーと事前に打ち合わせた通りだったのだが、このときに生じた小さな違和感が後に的中することになる。

アブダビに到着するまで、ボビーは根気強く何度も熱波を送り続けてきた。その熱にほだされる形で、日本側の社長は重い腰を上げた。

大会議場での商談でも、むしろこちらは受け身で、いかにこのビジネスに一緒に取り組みたいかを先方から熱く語りかけられるものと想像していた。ところが、熱を振りまくのはこちら側の役目となる。

それが、王族の面目を保つための儀礼だったのかどうかは今となっては確認のしようもない。ただ、交渉担当役としてのボビーの立場は以前より明確になった。

ボビーは新規事業の開発担当責任者で、「自分が走らないと組織は動かない」とこのあとによくこぼすようになる。

「日本に面白いビジネスモデルがあり、そのリーディングカンパニーが我々のグループに興味を示している」と社内を説得していたとしても、不思議ではなかったかもしれない。

文 石橋正樹

中東ビジネス、交渉決裂 〜閑散としたアブダビの印象〜

アブダビにはうってかわって人がいない。上海と北京、ホーチミンとハノイ、ムンバイとデリー、政治の中心と商業都市で顔や性格が異なる国は少なくないが、ドバイとアブダビのギャップもなかなかだ。

交渉担当者のボビーはパジェロで迎えに来てくれた。100キロ以上離れたオアシスに住んでいるということで、砂漠を走り抜けるのに四駆は必須アイテムなのだとか。

本社の会議室に向かう道すがら、出店候補地となる自社モールを案内してくれ、30坪にも満たないネイルサロンが月に10万 US ドルの売り上げをコンスタントにマークすること、カルフールの単価が極めて高いことなどをまくしたてるように話してくれた。

UAE の中でも、アブダビは資金力が豊富で、そこに住むエミラティーが可処分所得の多いことは事前の情報収集で理解していた。ボビーの説明と事前調査の内容は一致する。

それにしては、目で見るモールの様子があまりにも閑散としすぎていた。

素直にその感想を伝えると、猛暑のアブダビでは夕方以降に人の出足が良くなることを購買力のデータと共に力説する。その場は感心半分に大いに納得するが、後にこの印象が交渉の大詰めで日本側の判断に影響することになる。

文 石橋正樹

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