ジョホール州首相が辞任、政権の火種再燃か
昨年5月の新政権発足後、マレーシアで初めて州首相が辞任しました。場所は、シンガポールとの国境に近いジョホール州です。マハティール首相とジョホールのロイヤルファミリーとの間には、根深い対立があるとされています。
マレーシアに13ある州の中でも、ジョホールは少し特別です。同州のロイヤルファミリーは15世紀に栄えたマラッカ王朝の末裔で、州政府としては唯一、スルタンが指揮権を有する軍隊を持っています。
対立の始まりは、第一次政権でマハティール首相がスルタンの権力を弱める政策をとったことに起因するとされていますが、今年1月には国産第1号車となったプロトンの1985年記念モデルでスルタンが首相を送迎するなど、雪解けを演出する場面もみられました。
蜜月は長続きせず、そこから一転、州政府トップの辞任に至るまでの対立の構図を整理してみます。
- フォレストシティー
国立公園を王室の土地にし、中国企業(カントリーガーデン)が開発したジョホールのフォレストシティーを首相が選挙期間中に糾弾。政権奪取後、「フォレストシティーに住む外国人にビザは発給しない」と明言したことで、フォレストシティーのゴーストタウン化を危ぶむ声もある。 - ジョホールバル港開発
政府認可の下、香港の大富豪、李嘉誠氏が率いるハチソングループとマレーシア企業 KA Petra が進める港湾開発計画に、王子や周囲の関係者が「スルタンも自分も知らされていない。州首相も知らない間に、計画が進められた」。「マハティール首相の縁故主義によって、合弁企業に便宜が図られた」などと批判。マハティール首相は、批判を一蹴した。 - 国際刑事裁判所ローマ規定
批准を目指していた政府に対し、(イスラム法や王室の特権に関わる部分で)国の尊厳に影響を与える可能性があるとして、王子がソーシャルメディアで撤回を求めるキャンペーンを展開。最終的に、政府は計画を白紙にする判断を下した。
辞任したオスマン・サピアン氏は、マハティール首相が率いるマレーシア統一プリブミ党に所属しています。
野党連合からは後任に、かつて州首相を務めた同党の重鎮ムヒディン・ヤシン内相を推す声もあがりましたが、これに対し、マハティール首相は記者を前に、「負けた党が何を言う。勝った党が決めることだ」と怒りをあらわにしました。
この様子からも、後継者選びと入り組んだ問題の解決がいかに難しいかが伝わってきます。
後任には、統一プリブミ党から43歳のシャフルディン・ジャマル氏が選出されました。
YRCG マレーシアオフィス
石橋正樹