SCの売上構成要素について考える
この春は、SCのお仕事や取材が多く、SCについて色々と考えることが多くなりました。
SCの売上構成要素は、小売業と同じに以下の8項目であると考えます。
1.立地(どの商圏に、どの立地に出店するか)
2.規模(何坪の店を出店するのか)
3.ロイヤルティ(SCのブランドの認知度アップ、ブランドアイデンティティの確立)
4.商品力(テナントミックス)
5.販促力(認知、集客、買上のためにどのような販売促進をするのか)
6.売場力(入店、買上のためにどのような売場をつくるのか)
7.接客力(SC全体での受け入れ体制、カスタマーサービスなど)
8.固定客化力(ポイントカード、アプリなどの囲い込み、自社ECへの誘導)
「1.立地」、「2.規模」は出店のときに決まってしまいます。これを見誤ると悲劇です。
「3.ロイヤルティ」は、会社全体で醸成していくものなので、時間がかかります。以前は、SCのブランドロイヤルティはそれほど、意識されていませんでしたが、今はこれに力を注いでいます。前は、ブランド力をアップして、リーシングをしやすくするために行っていることが多かったのですが、今は消費者への認知度アップ、ブランドイメージの統一を図っています。ららぽーとや三菱地所のCMへの積極性、JRグループの商業施設のブランド統合などは、このための取り組みです。
そして、「4.商品力」。立地、規模、ロイヤルティの力相応にテナントミックスすることが必要です。SCの商品力を方程式で表すと「アンカーテナントの力×テナント数×グレードカバー力×鮮度×テナント戦闘力+ストーリー+独自性」となります。
SCも3000館体制へ経て、ライフサイクルが成長期から安定期に移行し、上記方程式の後ろの方(ストーリーや独自性)へ重要度が移行してきています。横浜のマリン&ウォークや新宿のニュウマンは、それぞれストーリー性の切り口が秀逸だったと思います。
しかし、ここ1年にオープンしたSCは、立地・規模・ロイヤルティからするとちょっと背伸びしているチャンレンジ案件という気がしています。テナントリーシングしていた頃は、アベノミクスによる期待感があったでしょうし、インバウンドというゲタを履いたということもあったのだと思います。
先日、オープンした東急プラザ銀座を見ても、それを感じました。感じるストーリーは、グローバル&ラグジュアリー。銀座という1等地ですから、それは良いと思います。ただテナントミックスからすると、全体的にテナントが小粒なのとグレードカバー力が弱いように思います。どこか、香港や韓国、台北のラグジュアリーモールに近い、ファシリティとテナントのパワーもアンマッチ(すなわちファシリティのわりにテナントのパワー不足)を感じます。
また、最近の傾向としてアンカーテナントがこれまでのプライヤーとは異なる店。昔は、百貨店やGMSなどの総合大型店が核になり、ここ2000年以降は準核として専門大店を複数持つようになりました。そして最近は、専門大店とならんで、これまでSCにはなかったような業種・業態をアンカーテナントとして導入。東急プラザ銀座は空港型免税店、マリン&ウォークはフレッドシーガルと結婚式場、エキスポシティは新型アミューズメント施設。SCのテナントミックスが進化したともいえますが、小売業のパワーダウンの現れともいえそうです。
グローバル化と脱既存小売、脱ファションという中、SCの差別化要因を考える春でした。
文 山中健(YCO代表)